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最高裁判所第三小法廷 昭和40年(オ)449号 判決 1968年11月26日

上告人

佐藤国雄

代理人

徳田敬二郎

秋山彰三

被上告人

仙台市

代理人

八島喜久夫

主文

本件上告を葉却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人徳田敬二郎、同秋山彰三の上告理由第一点、第二点(ただし禁反言の主張を除く。)について。

上告人がその主張の売買に基づき仙台市長町字茂ケ崎一二番の山林全部につき所有権移転登記を受けていることは、原審の確定した事実であるから、特別の事情のないかぎり、右一二番の山林全部を買い受けたものというべきであり、もし被上告人が一二番中の配水管敷地部分等を現地指示により買い受けたとすれば、同部分については二重売買がされたのであり、したがつて、登記を有する上告人の所有権が優先するといわなければならず、この点に関する原審の認定判断は違法である。しかしながら、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)は、被上告人所有の配水管等が上告人所有の一二番および八番の三の各山林上にあるとしても、上告人の本訴請求は権利の濫用として許されないと判断している。つまり、上告人が右配水管等の撤去によつて受ける利益は比較的僅少であるのに、右配水管等の設備は、仙台市の南地区市民約七万人の利用のため巨額の資金、多数の日子を費し、敷設、掘鑿され、これを連繋する大規模な総合水道幹線の枢要部分を形成し、これを撤去して、原状に回復し、新たに替地を求めて同一設備を完成するには相当多額の費用と日子を要するばかりか、右撤去によつて、給水の機能が停止し、近い将来その再現は望みえず、市民一般に不測かつ重大な損害が生ずる。したがつて、上告人の本訴請求は権利の濫用であるというのである。そして、この原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。そうとすれば、原審の前記違法は判決に影響を及ぼさないものといわなければならない。論旨は採用できない。

同第二点中禁反言の主張および同第三点について。

所論はいずれも、上告人が原審において主張せず、かつ、原審の判断しない点であるから、適法の上告理由たりえない。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(下村三郎 田中二郎 松本正雄 飯村義美)

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